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子どもを脅かすゲーム依存…原因は長時間のスクリーンタイムと運動不足

子どもを脅かすゲーム依存…原因は長時間のスクリーンタイムと運動不足

ゲームは子どもだけではなく、大人も一緒になってできる楽しい遊びです。ゲームを通して勝った嬉しさやクリアできた達成感などを味わうことができます。壮大な冒険へ出たり、戦って主人公を育成させたりと展開がコロコロと変わっていくのもゲームに没頭できる理由の1つです。

しかし、家でゲームばかりしていると外へ出て遊ばない、時間を守れなくてずっと遊んでしまうなどといった問題が生じます。それがどんどん悪化していくと日常生活に支障をきたすほどになり、ゲーム依存と呼ばれる立派な病気になってしまうのです。

 

ここではそんな病気から子どもを守るためにはどうしたらいいのか、ゲーム依存はどうして起こってしまうのかをまとめています。ゲーム依存はとても身近な病気です。リスクや予防法を知り、家庭でできることを実践していきましょう。

ゲーム依存は立派な病気

ゲーム依存はただゲームが好きで、のめり込んでいるという状態のことではありません。自分で自分をコントロールすることができなくなる病気です。現にWHOは2018年6月、「ゲーム依存症」を精神疾患の病気として認定しています。

では、ゲーム依存とは具体的にどのような病気なのかを詳しくみてみましょう。

日常生活で生じる支障

ゲーム依存は日常生活においてあらゆる支障をきたします。ゲームに没頭するあまり、自身の体調まで崩してしまうのです。まずゲームがやめられず夜中まで、また夜通しプレイすることにより睡眠不足に陥ります。

 

すると日中に眠たくなったり注意力が低下したりして、イライラすることが増えるでしょう。そして画面を見すぎることにより視力の低下まで引き起こします。最近ゲームのしすぎで睡眠不足だったり、目や腰が疲れやすかったりすると感じたときには注意する必要があるでしょう。

ゲームに対しての異常な欲求

ゲームがしたくてたまらないほど、頭の中がゲームに支配されている状態がゲーム依存です。ゲーム依存の人は理性が働くはずの前頭前野の機能が低下しています。お酒やギャンブルがやめられないことと同じなのです。快楽を求めてどんどんゲームに溺れていってしまい、その負のループから抜け出せなくなってしまいます。

ゲーム依存になる原因

子どもはもちろん、大人だってゲームで遊んだ経験があるでしょう。ゲームの世界観にハマってしまう人も少なくありません。ゲーム依存はゲームそのものの要素も理由の1つですが、生活環境の変化によって依存してしまうという人の割合が増えているのです。

ではなぜゲーム依存になってしまうのか、スポーツ庁が実施した令和3年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果を参考に原因を探ります。

スクリーンタイムの増加

現代では自分の部屋にテレビやパソコンがあり、好きなときに好きなだけゲームができてしまう環境にある人が多いのではないでしょうか。

また、共働き家庭だと親が帰ってくるまでずっとゲームをしているという子どももいるかもしれません。そうなると親が見ていないときでもゲームをすることができ、それが繰り返されることでゲームに対してコントロールができなくなってくる可能性があります。

 

スポーツ庁が実施した令和3年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果によると、スクリーンタイムが2時間以上という子どもの割合が増加していることがわかっています。スクリーンタイムとは平日1日当たりのテレビやゲームなどを見ている時間のことです。現代の子どもたちは防犯上、または習い事の関係で小学生でもスマートフォンを持っているのが当たり前になっています。

 

令和3年に行われた東京都の家庭における青少年のスマートフォン等の利用調査結果の資料から、小学校低学年でも20%以上の子どもがスマートフォンを所有していることがわかっています。親との連絡手段に使うのはもちろん、動画やスマホゲームがいつでもできることも事実です。家でも外でも、子どもが好きなときにゲームができる環境にいることがゲーム依存を引き起こす原因の1つと言えます。

運動遊びの減少

スポーツ庁が実施した令和3年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果から1週間の運動時間が減少していることが明らかになっています。近年では新型コロナウイルスにより部活動の時間が減ったり、学校の活動自体が制限されたりしたことが原因です。外で友だちと遊ぶことも減り、家にこもりがちになった人も多いでしょう。自粛中はテレビやゲームの長時間化が避けられません。

 

また昔より公園が減ったりボール遊びを禁止したりしているところが増えています。子どもが気兼ねなく自由に外遊びできる環境ではなくなってきているのです。ゲームはもちろんおもしろいですが、体を動かすことも楽しいし気持ち良いということを私たち大人がもっと子どもたちに伝えていく必要があるでしょう。

ドーパミンの過剰分泌

ゲーム依存は快楽物質であるドーパミンを大量に分泌します。脳の大脳辺縁系がつかさどっている本能に支配され、理性がきかなくなっている状態です。アルコールやギャンブル依存症、タバコによるニコチン中毒も同じです。これらはすべてドーパミンを大量に分泌し、依存性を高めてしまいます。ドーパミンが減るとまた快楽を求めるためにゲームをして、それがどんどん繰り返されることにより依存していってしまいます。

ゲーム依存の症状

WHOはゲーム障害の基準として以下のことを掲げています。

1.ゲームをする時間や頻度を自分でコントロールできない

2.日常生活でゲームを最優先させる

3.生活に問題が生じてもゲームを続けエスカレートさせる

このような行動が12ヶ月以上続いた場合は、ゲーム依存の可能性があると指摘しています。

 

では具体的にどのような症状が表れるのでしょうか。

禁断症状が生じる

ゲーム依存に陥ると頭の中は常にゲームのことでいっぱいになります。そしてゲームがしたいのにできないことで禁断症状が出てしまうのです。学校にいても家族といてもゲームのことが頭から離れず、できないと苛立ちを感じてしまうことはありませんか?そんな人は頭がゲームに支配されている状態かもしれません。

いつでもゲーム優先の生活になる

食事や睡眠よりもゲームをすることが最優先の生活になってしまうのがゲーム依存です。家族や友だちと過ごしたり、何か違うことをして遊んだりすることよりゲームが何より大切だと考えています。そのため睡眠不足や人間関係の悪化など様々な問題が生じてしまいます。ゲームを中心に生活をしているのです。

体に不調が起こる

前述したようにゲーム中心の生活を送ることによって、体のあちこちに不調をきたします。ゲーム依存は健康に日常を過ごすことよりもゲームをする時間の方が大切で最優先事項なのです。ゲームのことばかり考えていてほかのことは上の空になり、ぼーっとする時間が増えていることはありませんか?また画面を見過ぎることで視力の低下、睡眠不足によるイライラや風邪を引きやすくなるなど、体に不調が起こるのです。

運動時間とゲーム依存の関係

スポーツ庁が実施した令和3年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果から運動時間の少ない子どもはスクリーンタイムの時間が長いことがわかっています。運動遊びをあまりしない子どもはゲーム依存になりやすいのでしょうか。ここからは同じ調査結果を参考にしながら運動時間とゲーム依存の関係についてみてみます。

長時間のゲームが体力低下の原因に

ゲームをするときは長時間座ったままで同じ姿勢が続くため、筋力の低下につながります。座っている姿勢が猫背だと腰が痛くなったり、ストレートネックになったりと子どもでも大人と同じような症状が起こってしまうのです。

 

スポーツ庁が実施した令和3年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果から、1週間の総運動時間が420分以上という子どもはそれ以外の子どもと比べて、体力合計点が高いことがわかっています。つまり運動遊びをせず、ゲームばかりしていると体力や筋力が弱っていく可能性があります。

肥満である子どもの増加

スポーツ庁が実施した令和3年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果、肥満である子どもはそれ以外の子どもと比べて、体力合計点が低いことがわかりました。肥満の割合は増加傾向にあり、中学生男子では過去最大の数値です。家で過ごす時間が増えたことによる運動不足が肥満を引き起こした理由の1つと言えるでしょう。

 

運動遊びが減ってスクリーンタイムが長時間化していることも、肥満につながります。肥満予防にはもちろん、心と体の健康を保つためには適度な運動が必要不可欠です。

ゲーム依存を予防するために家庭でできること

子どもをゲーム依存から守るために、家庭でできる予防法があります。ゲーム依存は大人でもなり得る病気です。心も体も未熟な子どもが発症するといろいろな問題を引き起こします。そうならないように、今のうちからしっかり予防していきましょう。

親子でコミュニケーションを図る

ゲーム依存にならないために、まずは日々の生活の中で家族が子どもとしっかりコミュニケーションをとる必要があります。ゲーム依存になると家族とはもちろん、友だちと会ったり話したりすることよりもゲームが最優先という状態です。

 

ゲームの快楽に支配されないように、リアルな生活が充実できるように手助けしてあげましょう。子どもの興味のあるものについて話したり、休日には家族で出かけたり体を動かしたりするだけでも違ってきます。また習い事で興味の幅を広げてあげるのもおすすめです。

ゲーム以外に興味のあるものを見つける

ゲームにのめり込んでしまう前に、子どもが何か夢中になれることを見つけてあげましょう。ゲーム依存になるとゲーム以外のものは何も魅力的ではなくなってしまいます。絵を描いたり工作をしたり、絵本や積み木などなんでもいいのです。

それにプラスして天気の良い日には外で散歩、家の中でダンスなど少しでも楽しく体を動かせるような遊びを取り入れると運動不足解消にもなります。

 

小さな子どもにとって自分をコントロールすることはまだまだ難しいものです。ゲームという狭い世界だけではなく、もっと視野を広げて楽しいことを見つけられるようにいろいろな活動をさせてあげましょう。

まとめ

ゲーム依存は身近に潜んでいる病気です。特に現代の子どもたちはゲーム依存になりやすい環境下にあります。

スクリーンタイムの長時間化を防ぐためにも、体を動かして遊ぶことのおもしろさを伝えてあげることが大切です。家族間でのコミュニケーションを通して、子どもの頃から多くの経験ができるように手助けしてあげてください。