現代のこどもは体力が低下している?その実情
現在のこどもの体力は30年前の親世代と比較して低下しているということをご存知でしょうか。
文部科学省が行っている「体力・運動能力調査」によると、現在のこどもの体力・運動能力の結果をその親の世代である30年前と比較すると、ほとんどのテスト項目において、こどもの世代が親の世代を下まわっているそうです。
下の図は、平成30年度のこどもたちと、昭和60年度のこどもたちの実際の50m走とソフトボール投げの記録を比較したものです。
さらに注目すべき点は、体格は現在のこどもの方が上回っているということ。現在のこどもの体力は体格のわりに、昭和60年のこどもの体力に比べ低い水準であるという深刻な結果が出ているのです。
とはいえこどものこと、発達が著しいその時期の体力低下を心配するのは神経質では? 体力低下が一体どんな問題を生むの? と疑問に思われる方も多いと思います。これが実は大問題。体力の低下は、精神面の脆弱さ、病気のリスク、知力の低下など、あらゆるリスクをはらんでいるのです。
こどもの体力はどうして低下してしまったのか
体力のある健康な身体づくりには、バランスの良い食事、十分な睡眠などがあげられます。現在のこどもの体力低下の要因として、朝食を取らないこどもが増えていること、幼児期から就寝時間が遅くなっていることなど、生活習慣の悪化が指摘されています。もう一つ、体力低下の大きな要因としてあげられるのが、運動量の減少です。具体的には以下の点が原因として考えられています。 ・学習活動や室内遊び時間の増加により、外遊びやスポーツ活動時間が減少した ・空き地やボール遊びのできる公園など、こどもが手軽に外遊びできる環境が減少した ・少子化により、兄弟姉妹、近所のこどもなどの遊び仲間が減少した こどもたちが外遊びなどの運動よりも、スマホやゲームなどの手軽で刺激的な遊びを好むようになったことは、多くの親御さんが心配されるところでしょう。ここ数年のこどものスクリーンタイム(平日1日当たりのテレビ、スマートフォン、ゲーム機等による映像の視聴時間)の増加は顕著で、体力低下に大きく起因しているといわれています。そんな中でこどもに運動をさせるには、こどもが魅力を感じるような運動環境づくりや、積極的にスポーツを体験させる工夫をしていかなくてはならないでしょう。体力が低下すると、精神面、学力にも悪影響が!?
体力の低下、運動離れが進んでいるとはいえ、学力など他の能力を伸ばせば良いのでは? と考えていませんか。しかし、体力とは人間の活動の源であり、体力が低下すると、健康の維持のほか、意欲や気力といった精神の強さにも大きく関わってくるのです。体力は豊かな人間性を育む力や自ら考える力といった「生きる力」そのものなのです。 運動不足や不適切な生活習慣により、肥満や生活習慣病などの病気のリスクが上がります。また体力は、ものごとに取り組むやる気、集中力、ねばり強さなどの働きも高めるため、これらの気力が湧かないと学力にも影響しかねません。体力の低下により、ますます身体を動かさなくなるため、一層の体力低下を招くという悪循環に陥ることにも。さらにこれが深刻になると、医療費など社会的なコストの増加にもつながります。将来的には社会全体が活気をなくしてしまうとも考えられるのです。こどもの体力低下を防ぐには、小さい頃からの運動習慣が大事!
こどもの体力低下を防ぐには、積極的に身体を動かす習慣を身につけ、意識して身体を動かすようにさせることが大切です。特に小学校低学年以下のこどもは、遊びや運動を通して、身体の動かし方を学び、脳の発達を促します。こどもに運動の習慣を持たせることが、知力や精神力の向上の上でも大変重要なのです。 また、小学校入学前の幼児期から運動の習慣は、小学校入学以降の運動習慣に影響するという調査もあります。スポーツ庁の「体力・運動能力調査」によると、小学校入学前の外遊び(つまり外で身体を動かすこと)をよくしていたこどもほど、男女ともに小学校入学以降(10歳児)も運動の頻度が高いという結果があります。また、小学校入学以降(10歳児)の男女ともに、入学前に外遊びをしていた頻度が高いほど、文部科学省が実施する身体力テストの合計点が高くなる傾向にありました。つまり、幼児期に身体を動かして遊ぶ習慣を身につけることが、小学校入学後の運動習慣の基礎を培い、体力の向上につながる要因の一つになるといえそうです。小さいうちから運動に慣れ親しんでもらうには、以下のような工夫が必要です。
・年齢に応じた指導
・多様なスポーツに触れる機会
・こどもが自ら身体を動かすことを楽しめること
・親子で楽しめること
・積極的に取り組みたいと思えるような仕掛け
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