/official/topics/6736 PAPAMO | 豊かな原体験を今に再現、遊びの伝道師 〜森田次郎さん・前編

豊かな原体験を今に再現、遊びの伝道師 〜森田次郎さん・前編


2018年12月7日

その他

ウェブ関連のコンサルティング業のかたわら、教育に関する事業を展開されている森田次郎さん。PAPAMOでも講師としてご活躍いただいています。 小学生を対象に体験学習を行う「三鷹市のふれあい教室」、ドイツ発祥のボール遊び教室「バルシューレ教室」、長野での農業体験ツアーなど、その活動は多彩です。今回は、前・後編でその独自の教育について教えていただきました。
盲学校の教員だったお母様と、大自然を教室にいろんな体験をさせてくれたお父様の影響で、今でも教育は自分にとって身近にあるものとおっしゃる森田さん。自身も3児の父であり、こどもにとって良い環境を考える延長に現在の活動があると言います。
前編では、幼少期の原体験をそのまま形にしているという、独自の 教育法について伺いました。
後編:複数の「好き」がへこたれない子を育む〜森田次郎さん
教育は敷居の高いところにあるものではなくて、日々の中にあるもの
―教育に取り組まれるようになったきっかけをお伺いできますか。
森田:もともと母が盲学校の幼稚部の教諭だったり、大学教諭が親族に多かったりと、教えることや教育が身近にありましたね。
あとは、親になったのが大きいですね。父親ってこどもにとっての教育者になることだと思うんですよ。会社経営や、上司になること、プロジェクトチームのリーダーになることだってそう、あらゆるシーンに教育がありますよね。教育は敷居の高いところにあるものではなくて、そういった関わりの中に日々あるもので、自分にとっては身近に教育の環境があったのと、こどもにとって社会がどうあって欲しいか、そう考えるようになったのが一番ですね。
原体験は、めちゃくちゃ楽しかった自然の中での遊び
「ふれあい教室」での様子
―森田さんは、長野で農業体験や自然の触れ合い体験などができるツアーを企画されていますよね。この活動は、ご自身の幼少期の経験が関係しているのですか。
森田:まさに自分の原体験が今の活動そのものですね。父が地方創生に取り組む事業をしていて、その都合で過疎化が進む中山間地域などの仕事場に、よく兄と連れて行かれました。父が仕事をしている間に、僕と兄貴は、夏なら川で、冬なら雪原で駆け回って遊んでいました。学校ってつまらないじゃないですか。いや、楽しもうと思えば楽しいんだろうけど。毎日同じことの繰り返しで、先生から言われたことを守っていくというか、受け身ですよね。
これとは対照的な自然の中での体験が、めちゃくちゃ楽しかったんです。
こどもが自ら楽しむことを実感できる、そんな環境や遊びを常に考えている
―やはりそういった体験がこどもには大切とお感じになったということですね。
森田:こどもにとって、先生とか大人に言われてやるのではなくて、自ら望んで夢中になれることに取り組むほど幸福度が高いと言われています。近頃は、教育の現場でもエビデンスが出てきていますよね。自然はまさにその宝庫で。
僕は、自分自身で楽しむことを実感できる環境や遊びをどう作るかを常に考えていますね。だからこそ自然に連れて行くんです。自然の中だと、トンボを捕まえて、川で泳いで、冬には雪と戯れて。これに勝るものはないですよね。ディズニーランドはディズニーランドで楽しいと思うんだけど、あえて何も用意されていない環境でどう楽しむかということも大事だなと。
今の親達も皆さん、自分が実体験してきた遊びや環境を、できればこどもにも体験させなきゃと思っていると思いますよ。親子を田舎に連れて行っても親の方が喜んでいますからね。
こどもは基本的には放っておいたらいい
―思いきり遊べる自然が少ない都会の親御さんは、どういう経験や環境を我が子に与えたらいいのか、悩んでいますよね。
森田:基本的には放っておいたらいい(笑)!お母さん達ってみんな悩んでいますよね。「〜しなければならない」「〜してはいけない」という呪縛にとらわれていると思うんです。こどもにも「〜しちゃダメ」とつい言ってしまう。こうやったらいけないんじゃないかとつい考えがちですけど、基本的には泳がせておけばいい。
自由がいいんだなっていうのを、僕の教室とか来てもらって感じてくれるといいなと思うんですよ。極端な話、机の上に立っていたらつい「机に乗っちゃダメ」って言ってしまうけど、小学校低学年くらいまでのこどもに言うことを聞かせるのは、動物に言うことを聞かせるようなものですよ。
最近よく「こども達はストレスが溜まっている」って耳にしますね。でも、学校って動物園の中で、小さなゲージに入れられているようなもので、それはストレスも溜まりますよ!そんな状態で、言うこと聞くわけがない。だから、「こどもは言うこと聞くわけない前提」でいるくらいがちょうどいいんじゃないですかね。
日本では子育てはしつけだという考え方が根深いのか、つい親って我が子をホールドしたくなっちゃう。「うるさい子」ってなるとお母さんの評価に繋がるというような考え方。それは違うなと思いますよ。
じゃれあいが体の基礎を作る、トライアンドエラーを繰り返して成長する
―家庭の育児においても、自分が育った環境との違いにジレンマを抱えている親御さんが多いと思いますが、親子の関わり方についてはいかがですか。
森田:こどもは動物と同じで、小さい頃に戯れるのが何より大事。ライオンとか狐とか、じゃれあっているじゃないですか。噛んだり走ったり、親に「ガブッ」と噛まれて「キャイン」ってなる。あれが体を動かす基礎になるんです。
お父さん、お母さんが相撲をとってあげたらいい。そのじゃれあいが体の基礎を作ると思いますよ。そうしているうちに「こうやったら痛いな」とか「こうやったら痛くないな」とか、勝手に覚えるんですよね。
つまりロボットと同じで、トライアンドエラーなんですよ。じゃれあいもデータなんです。何がバグで、何がバグじゃないかを繰り返し検証していくんですよ。くだらない喧嘩や、鉛筆でブスッと刺したら血が出て「痛てぇー!!」って。あれがめちゃめちゃ大事。
だから、基本的には自分のこども達の喧嘩も仲裁はしないですよ。
昔は上級生がうまく遊びをコーディネートしていた、ただそれを僕がやっているだけ
―「ふれあい教室」をはじめとした多くの森田さんの教育活動では、ルールを設けずに自由を大切にした方針で行われているのですか。
森田:ほぼ自由です。教室を成り立たせなきゃいけないから、多少の軸はありますよ。「今日はスライム作るから動画撮ろう」とか。でも、スライム作るのに夢中になっていて、気がついたら「動画撮らなかったな」とか(笑)。まあいいやって。動画撮りたいのはこっちの都合ですからね。
あと、ふれあい教室でも他の活動でも、こども達が受身にならないように気をつけていますね。大人でも90分ずっと人の話を聞くのって辛いじゃないですか。僕だって辛い。だから大人との関わりは、遊びを通していろんな人の話を聞ける環境を作るようにしています。一人の先生じゃなくて、いろんな大人から話しかけられるのが大事なのかなって。
「ふれあい教室」で行われた稲刈り体験の実際の様子
この間の体験教室では、こども達と田んぼで稲の収穫を体験したんですよ。
稲を収穫して、切って、揃える作業の中で、地元のじいちゃんだったり、他のこどものお母さんだったりに教えられながら、自分をコントロールしていくっていうのが良い!5分くらいで飽きちゃう子もいますよ。でもそれはそれで良くて、楽しかったらやるわけだからね。
教室だと成り立たせなきゃいけないから軸はある程度もうけるけど。道具とかも必要最低限でいいかなって思いますよ。最近ではボールだけ渡しておいたらいいんじゃないかと思っているくらいで。僕は近所のお兄ちゃん役だから。基本は「こういう楽しいことあるけど、一緒にやらね?」「やるやるー!」ってノリですよ!
PAPAMOで講師としてこども達と戯れる森田さん
昔だったら近所のこどもたち同士で「バッタ捕り行こうぜ」ってことになる。そしたら年上のお兄ちゃんが「ただ捕っても楽しくないから、バッタ1点、カマキリ5点、カナヘビ10点な」とか提案して、何もなくてもどんどん遊びが発展していったわけです。公園では野球でも、サッカーでも、ゴールなんかなくたって工夫していましたよね。あの木に当たったらホームランとか。今は公園に行っても「ニンテンドースイッチやろう!」かな(苦笑)。
昔は上級生がうまく遊びをコーディネートしていた。今は学年も、それぞれの家庭も分断されていますからね。僕はただそれをやっているだけで。大したことやってないです、ほんとに。
後編に続く
森田次郎さん
一般社団法人エデュケーション・コミュニティ/一般社団法人ワークスデザイン代表理事。三鷹で放課後体験型「ふれあい教室」「バルシューレ教室」を主宰。PAPAMOで講師として活躍中。WEB関連のコンサルティングから、教育まで複数の事業を手掛ける、コミュニケーションデザイナー。バルシューレC級指導者、中高老年期運動指導士、サッカー3級審判員。趣味は、ウルトラマラソン。